エルメスのアンサンブル(セーターとカーデン)のご依頼がありました。
前面はシルク100%、ニット部分はカシミヤ50%、シルク50%の混紡。さすがエルメス、贅沢な素材のつくりです。
さて、前面の柄部分に大きな食べこぼしのシミがあります。クリーニング表示は「ドライのみ可」となっているので、指示通り進めることにします。とてもデリケートな生地なので、ドライでも最もソフトな洗い方で『油性のシミ』を落とします。
前面に大きなシミが!
クリーニング店に出したのに、シミが落ちない!
1回目のドライクリーニングが終えた時点、半分くらいは綺麗になりましたが、まだ白いシミが残っています。
食べこぼしには、いろんな要素が混ざっていて大きく分けると「油性のシミ」と「水溶性のシミ」に分かれる。ドライクリーニングは、この「油性のシミ」はよく落ちるのですが、「水溶性のシミ」は落ちにくい。
ここが、大事なポイントなんです。
よく、「クリーニング屋さんに出したのに、全然シミが落ちないで返ってきてがっかりした」という声を聞きます。それは、まさにこのケース。油性は落ちたけど水性のシミが落ちてないから。
じゃあ、どうすればいいかというと、ここから先は「水洗い」で落とすしかない。
でも、このエルメスのように、「ドライのみ可」のデリケートな衣類を洗濯機で回したらオシャカですよね。
そこで必要なのが「縮まない水洗い=ウェットクリーニング」なんです。
ドライのみで洗った直後
ドライの後、ウェットクリーニングで水洗いしたら
ウェットクリーニングとは
油分を含まない汚れやシミ。例えば「汗」「ジュース」「お茶」、、、これらがついた時、一番いいのはすぐ水洗いすることなんです。
でも、ウールやシルク、カシミヤなど繊細な繊維は水洗いしにくいですよね。かといってドライクリーニングだけでは落ちない。
そこで必要なのが「ウェットクリーニング」というデリケート素材でも縮ませない洗い方なのです。これは難易度の高い「クリーニング技術」。
そのためには、「縮まない」と同時に「艶」「柔らかさ」「風合い」を失わせない『特殊な加工剤』が必要で、柳屋ではそれをずっと研究してきました。
ウールやシルクの風合いを保ちながらそれを水洗いするには特別な材料が要る。そして、洗い方も超ソフトなものが求められる。
ドライと水洗いの両方が必要!
しみ抜き完了!きれいになりました。
素材別クリーニングの仕上げ
柳屋はレギュラーコースの他に『素材別クリーニングコース』を設けています。
通常の衣類なら、ドライクリーニングだけできれいになりますが、縮みやすい生地には『寸法を測っておく』『ウェットクリーニング』『特殊な加工剤』『特殊な仕上げ』という別の作業が必要となります。
そしてウェットクリーニングで一番難しいのが実は『仕上げ』なんです。
水洗いと言えば簡単に思うかもしれませんが、「シワ」が多くなる。これを整形しながら仕上げるのは容易ではありません。
例えばシルクのスカーフを水に浸けるとわかるはずです。かなりシワクチャになりますよね。ドライクリーニングだけより数倍の時間と手間がかかる。
シミの性質や、素材の種類に応じて細かい工程が増えてくるのは当然です。
最高の仕上がりをお届けするためにも、柳屋はその工程を省くことなく大事に作業しています。
家庭洗濯で失敗が多いのが『ウールセーター』。
縮んで硬くなったセーターは元に戻らないケースもあります。
だから『縮まないウールセーターの洗い方』をご紹介します。
ウールが縮むのは機械力(洗濯機で回す)が原因。ウールに限らず、デリケートなセーターは『手洗い』で優しく洗いましょう!